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世界中から注目を集める日本のマンガ文化。国内にはマンガ・アニメ関連の美術館や記念館が点在し、連日賑わっています。そのなかの一つ、秋田県横手市にある「横手市増田まんが美術館」は、原画の収蔵・展示に特化した、日本でも珍しいスタイルの美術館です。収蔵する原画枚数はなんと43万枚以上。182名(2021年10月時点)ものマンガ家の原画を有しているというから驚きです。
日本が世界に誇る文化、マンガ・アニメ
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日本を代表するポップカルチャーといえば、マンガとアニメ。子どもから大人まで楽しめるジャンルの豊富さはもちろんのこと、緻密なストーリー構成や繊細な描写が、国内外から高い評価を受けています。ここ数年は、マンガの舞台となった地を巡ることが旅の目的になったり、日本のアニメイベントが国外で開催されたりと、ますます熱い視線が注がれています。この記事では、秋田県にある横手市増田まんが美術館の魅力に迫ります。
横手市増田まんが美術館とは?
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1995年に開館した横手市増田まんが美術館は、日本初の「マンガ」をテーマとした美術館。横手駅から車で約30分ほど、1750~1920年頃に建てられた蔵や木造家屋が建ち並ぶ増田エリアにあります。
実は国内にある同様の施設は、マンガ家個人の功績や作品を紹介する記念館であるケースがほとんど。マンガ全体にスポットを当てるというのは非常に珍しい取り組みとして、開館当時話題になりました。
さらにマンガファンの心を射止めたのが、国内外のマンガ家の原画を展示するというスタイル。これは、同館の名誉館長であり、『釣りキチ三平』の作者・矢口高雄さんの「直筆ならではの迫力と美しさ、作家の熱意を感じ取れる機会をつくりたい」という思いがきっかけだったそうです。
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2015年に矢口高雄さんから約4万2千枚もの原画寄贈を受けたことを機に、横手市増田まんが美術館は2017年から2年間をかけ、建物をリニューアル。膨大な原画を保管する設備を整えたほか、拡張した展示スペースでは、常時74名のマンガ家の原画を鑑賞できるようになりました。現在同館では、矢口さんをはじめ、『銀河鉄道999』の作者・松本零士さん、『キャプテン翼』の作者・高橋陽一さんなど、マンガ家182名分、計43万点以上もの原画を収蔵・展示しています。
入館すると目に留まるのが、高さ約10m、幅約7mの巨大な「マンガウォール」。人気マンガの原画を引き伸ばしたもので、壁を彩る名シーンはどれも見ごたえ抜群です。
マンガを原画で読める!「マンガの蔵」
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いちばんの見どころは、22万以上もの原画を収蔵・管理する「マンガの蔵」です。原画の保管に最適な温度と湿度に保たれた収蔵庫は、ガラス越しに見学が可能。現在、矢口さんや『喰いしん坊!』の作者・土山しげるさんなど7名のマンガ家が作品の全原画を預けています。
マンガの蔵で注目したいのが、専用キャビネットの引き出しに原画を収納した「ヒキダシステム」です。キャビネット一台で約1話分の原画を見ることができます。常時2作品を展示。原画でマンガを読むという貴重な体験は、ファンならずとも感動してしまいます。
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デジタル保存された原画を閲覧できる大型のタッチパネルも必見です。画面に手をのせ表示されている絵をピンチアウトすると、原画が拡大。細かな修正の跡やペンのタッチなど、細かな部分まで確認できます。
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デジタル保存の作業は室内のアーカイブルームで行われています。専門のスタッフが1200dpiもの高解像度で保存。スキャンには約10分もかかるのだとか。タイミングが合えば作業をガラス越しに見れますよ。
74名分の原画がずらりと並ぶ「常設展示室」
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マンガの蔵を楽しんだあとは、常時74名分の原画を展示する「常設展示室」へ。入り口部分に設けられたフロア「マンガ文化展示室」で、マンガ文化や美術館の取り組み、マンガの制作工程を学んでから向かいましょう。
常設展示室の中央には、横手市増田まんが美術館のシンボルツリーであるブナの木が樹立。木を囲むように続くスロープと2階の1室がギャラリーになっています。
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複数の作品を一度に見られるとあり、書き込みの細かさなど、さまざまな発見があるのもおもしろいところ。原画は定期的に入れ替えられ、展示されていない原画はシンボルツリーの前に設置されたタブレットで閲覧できます。
ユーモラスな展示とワークショップもチェック
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2階には常設展示室のほか、マンガに登場する印象的なセリフをフキダシとして展示する「名台詞ロード」や2万5千冊のマンガが読み放題の「マンガライブラリー」などがあります。なかでも名台詞ロードは、好きなセリフの前で撮影する来館者が多く、フォトスポットとしても評判なのだとか。
また、2階の「ワークショップルーム」では、土・日曜、祝日にワークショップを開催しています。原稿にスクリーントーンを貼る「アシスタント体験」や、コピックや色鉛筆で色を塗る「カラー原稿体験」など、内容は様々。参加人数が限られている企画もあるので、事前に公式ホームページで企画内容を確認してから来館するのがおすすめです。
内装も魅力的な「マンガカフェ」
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マンガの魅力を満喫した後は、1階にある「マンガカフェ」へ。トーストやパスタなどの食事メニューにスイーツ、ドリンクが味わえます。ビーガン対応メニューも1種類用意。オーダーは食券制です。食券機は英語表記あり・写真付きと、海外から訪れた人にもオーダーしやすくなっています。
マンガのキャラクターをモチーフにしたメニューやオリジナルコースター付きのドリンクが特に人気が高いそう。また、テーブルやボックス席の壁には、マンガのワンシーンに出てくるようなセリフがデザインされ、メニューを置くとコミカルな写真が撮れる仕組みになっています。
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店内の壁にも注目を。ところどころに描かれている絵は、来館したマンガ家たちによるもの。コメント付きのものもあり、絵を眺めながら食事を楽しめます。
ミュージアムショップでおみやげ選び
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1階のミュージアムショップ「Straw Hat」では、複製原画やポストカード、トートバッグなど、多彩なアイテムを販売しています。ここでしか販売していないオリジナルアイテムもありますよ。
館内は定期的に開催する企画展を除き、入館無料。ひと足踏み入れればマンガファンならずとも満足する、横手市増田まんが美術館へ訪れてみてはいかがでしょうか。
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横手市増田まんが美術館
- 住所 秋田県横手市増田町増田字新町285
- 電話 0182-45-5569
営業時間:10:00~18:00(入館~17:30)
料金:入館無料(企画展は有料)
定休日:第3火曜日(祝日の場合は翌平日休)
Text by:株式会社シュープレス
※価格やメニュー内容は変更になる場合があります。
※特記以外すべて税込み価格です。